第3章「町内会・自治会やPTAの会計事務の流れ」
町内会・自治会やPTA全国共通していることは、ただひとつの例外を除いて前の年度と同じことを毎年度繰り返し行っているということです。そしてただひとつの例外が何周年といった記念行事を行う場合です。私の場合PTA役員の3年目が小学校創立30周年また自治会会長の去年が市制30周年に当たりまして、小学校の場合は航空写真とか中庭への池の作成とかそれなりの充実感はあったのですが、市制30周年の場合は
といった案内が市役所から止めどもなく届きますと、とりあえず回覧しておけばいいかとなってきます。(もちろん真面目な会長さんはきちんと「動員」を掛けてらっしゃるのでしょうが)。
多少本論とは離れるのですが、町内会・自治会及びPTAいずれでも経験したのですがどうして行政は「これこれの行事に何名参加してください」というのが好きなのでしょうか。講演会等の行事はたいていが平日昼間ですから、仕事をお持ちの方はまず出席できませんし(自治会の講演会があるから有給休暇をくださいと申請すれば、間違いなくリストラ対象になるでしょうね。)かといって専業主婦なら暇だからという発想は誤っていると思います。
講演会の内容が興味のありそうな物ならば参加者も募りやすいのですが、退屈そうな催しであれば、私のように気の弱い会長は強制的に動員を掛ける気になれません。そこで何度か会長自ら講演会等に出席するはめになるのですが、前列に役所の人間とおぼしき人が陣取っているのを見ると、「この人たちは冷暖房の整備された会場で座っているだけで仕事になるのに自分は講演会の時間を削ったばかりに、残業しなければならない。」と悲しい気分になってきます。
いっそうのこと人数の割り当てなど止めて参加者の少ない企画は失敗として翌年からの実施を再検討するということをすれば良いかと思うのですが、私自身行政機関に身を置いた人間として解るのですが、やはり前例尊重なのでしょう。
講演会等には参加者名簿がありますので、後でどの団体から何名参加との集計は可能でしょうから、参加が少ないと町内会・自治会なら行政への働きかけの際に不利にならないか、PTAなら学校に迷惑が掛からないかと心配になってしまいます。ただ世の中は相変わらずの不景気ですし、町内会・自治会やPTA役員にとって時間はますます貴重になっていくわけですから行政側ももうちょっと工夫をしていただければなと思います。
本論の町内会・自治会やPTAの会計事務の流れは次のとおりです。但しいずれも参考例ですので善し悪しは別にしてあくまで前年行事を滞りなく踏襲することが基本となります。
予算編成・審議(*1)
↓
旧役員からの引継(*2)
↓
総会での決算報告書の承認・予算確定(*3)
↓
会費の徴収・帳簿への記入
↓
支出負担行為依頼への対応 (*4)
↓
帳簿への記入
↓
年度1回以上の会計監査を受ける
また各月末毎に収入・支出を項目別に集計し、現金・預金が帳簿と一致していることを確認する。(*5)
↓
決算書報告書の作成 (*6)
予算編成・審議
↓
新役員への引継
↓
総会(*7)
*1 第2章で述べたように本来はこの段階から新役員も関与するのが望ましいと思われます。但し既に旧役員が予算を編成・審議しており総会の時に初めて当年度の予算を見るケースが多いかもしれません。
*2 預金通帳・会計記録簿・証憑等を旧会計担当役員から受け取る際に必ず決算書の金額と通帳残高・会計記録簿残高が一致していることを確認してください。
*3 総会では新役員が承認されます。
*4 支出負担行為依頼とは町内会・自治会やPTA活動のための支出を求められることです。この際
・支出が町内会・自治会やPTA活動方針に沿ったものであるか
・金額の裏付けとなる資料がそろっているか 確認してください。
また領収書等との引き換えではなく、仮払金がまず発生するときは第1章で述べた方法に従って処理してください。
あと業者との契約が先行し支払は工事等の完了後ということもあるかもしれません。通常このような場合は支出が多額になることが多いでしょうから、本来は複数の業者から見積をとり役員会で比較検討した上で、契約先を決定すべきです。
*5 収入・支出の項目別集計の際は特に予算額との比較に留意してください。また各月末毎の現預金と帳簿とのチェックの際に万一相違があれば、帳簿の記入誤りや集計誤りがないか速やかに原因を調査してください。
*6 特に予算額と決算額の間に大きな違いがある項目についてはその理由を把握しておいてください。
*7 一般的な総会の式次第は次の通りです。
1.開会宣言
2.成立宣言
3.議長選出
4.議事
(1)前年度事業報告
(2)前年度会計決算報告
(3)前年度会計監査報告
(4)今年度事業計画案
(5)今年度会計予算案
(6)新役員選出
5.議長解任
6.前会長挨拶
7.閉会宣言
通常は新役員の方は総会に出席するのは初めてでしょうから不安な面もあるかと思いますが、(6)新役員選出までは出番はありませんので、一年後の式次第を確認する程度の気楽な気持ちでいいかと思います。但し会長の方は簡単な挨拶をして、場合によっては他の役員の方を紹介する必要がありますので、名前を間違えないようにしてください。
また議長については過去町内会・自治会やPTAに関与された方に前会長があらかじめお願いしておくのが通常です。総会については実際に会場に足を運ばれる方は少なく、ほとんどが委任状による出席者で淡々と議事進行が行われるのですが、もし議事について質問が出たときは議長の力量が問われることになります。
町内会・自治会やPTA等の非公式組織の運営に関しては「ロバート議事規則」という文献があります。
同文献によると会議の議長の任務は次のとおりです。
・開会を宣言し定められた時刻に会合を開くこと。
・議事等を適切な順序で取り上げること。
・発言権のある構成員の発言を許可すること。
・すべての議案を取り上げ表決に付し、表決結果を
発表すること。
・無意味な議案や引き延ばし議案を認めないことにより、それらから会議を保護すること。
・構成員のもつ諸権利を侵害しない方法で、議事を迅速に進めること。
・すべての議事進行に関する疑義につき裁定を行うこと。
・会議の議事に関連して構成員の行う議事手続に関する要請または事実に関する情報の要請に対して回答すること。 等
役員としては何事もないと解ってはいても、無事総会が終了するとホッとします。
